世の中の観察日記

世の中を見て、思ったこと・考えたことを自由につづって参ります。このブログを読んでくださる方々と、「安心」を共有することを望んでいます。

必ず芽ぶきのときが来る。

年の瀬というこの時期ゆえに、

私は、ある風景を思い出しておりました。

 

私の好きな本の一つに、

中国の古典『菜根譚(さいこんたん)』があります。

 

好きになったのは、

『1分間でわかる「菜根譚」』

という解説書的な本を読んでからのことなのですが、

この本の中(P117~119)に、

私が思い出していた風景がありますので、

ご紹介させていただきます。

 「草の木の葉がハラリと落ちるときも、その根元を見ると、新たな芽ぶきがあって次にひかえている。」

……菜根譚は、葉の落ちた根元(葉の付け根の部分)に、次の新芽がひかえていることに注目している。細かい観察眼に思えるけれども、日本には、菜根譚より二百年以上前に、これに注目していた人がいる。……兼好法師、『徒然草』の著者である。その百五十五段に言う。

「木の葉の落つるも、まず落ちて芽ぐむにはあらず。下より萌しつわるに耐えずして、落つるなり」

と。「つわる」とは、下から突き上げること。妊娠中の「つわり」と関係のある言葉である。

 次の芽の突きあげによって葉は落ちる兼好法師も、落葉樹の葉の付け根を見たことがあったのだろう。

 兼好法師菜根譚も、四季の変化を同じような感覚でとらえている。春から夏の変化も、ある日突然切り換わるのではなく、春に夏が含まれつつ、夏になる。冬に春の気が徐々に増して春になるのと同様である。

 人生、山あり谷あり。浮き沈みがある。落葉の時期があっても、そのあとには必ず芽ぶきのときが来る。それが自然というものだ。

 うまくいかないことがあって、落葉ならぬ落胆することがあっても、自分自身に、次の芽ぶきのエネルギーがあることを見落としてはなるまい。ましてや、みずからそれを否定してしまっては、あまりにもったいない。

 落葉樹も人間も、けっこうタフにできているものなのだから。

 

私が思い出していたのは、

「新たな芽」の伸びようとする突き上げによって「葉」が落ちる

という、この風景です。

 

今、2016年という「新たな芽」が伸びようとして、

2015年という「葉」が落ちようとしているところだと思います。

 

しかし、「新たな芽」が顔を出すことができるのも、

やはり、「すでに枯れ落ちた葉」が土に還り、土となって、

「下から突き上げよう、押し上げよう」としてくれているのだ、

と私は思います。

 

ですので、

これまでに起きた出来事、経験、気づき、学びなどが、

押し上げる力となって、

「必ず芽ぶきのときが来る」ということを、

また、このようにして新しい年が始まるのだということを、

思い浮かべながら、年を越えて行きたい、と思っております。

 

実は、大晦日という今日、

私は、とても大事にしていたものを、

どこかで落としてしまい、失くしてしまいました。

 

落としたのは、私の不注意にほかならないのですが、

大事に、とても大事にしていたのに、

それでも落としてしまうことがある、

ということを、痛感いたしました。

 

なぜ、私から離れていったのか、

などと考えてしまいますが、

落としたものが、

何かを芽ぶかせるための力となることを信じようと、

今、思っています。

 

また、私は、本年4月にブログを開設し、

今日まで記事の更新を重ねることができましたことは、

当ブログをお読みくださいました皆様のおかげと存じ、

感謝いたしております。

どうもありがとうございました。

 

来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

末筆ながら、

皆様の明るく楽しい一年を心よりお祈り申し上げます。

 

※念のため、当記事でご紹介させていただいた『菜根譚』の

 該当箇所について、訳文と書き下し分を載せさせていただきます。

             (『菜根譚岩波書店P343,344)。

[訳文]

「秋に草木の葉が枯れ落ちると、すぐもう芽生えが根元に現われている。四季のめぐりは凍りつく寒さの冬になっても、やがて一陽来復冬至を知らせて灰が飛ぶようになる。(このように天地自然は)、草木の枯れ落ちさせるきびしさの中に、また草木を生成繁茂させる生命力が常に主となっている。これによってこそ天地自然の心が知られる。」

 

[書き下し文]

「草木纔(わずか)に零落すれば、便(すなわ)ち萌頴(ぼうえい)を根底に露(あら)わす。時序凝寒(ぎょうかん)と雖も、終(つい)に陽気を飛灰(ひかい)に回(かえ)す。粛殺の中に、生々の意、常にこれが主となる。即ち是れ以て天地の心を見るべし。」

 

(漢文は割愛させていただきます。)

 

 

お読みくださいまして、どうもありがとうございました。

 

引用・参考文献

『1分間でわかる「菜根譚」』渡辺精一 三笠書房

 1分間でわかる「菜根譚」 (知的生きかた文庫)

菜根譚』洪自誠、今井宇三郎(訳注) 岩波書店

 菜根譚 (岩波文庫)

 『徒然草吉田兼好今泉忠義(訳注) KADOKWA

  徒然草 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)