世の中の観察日記

世の中を見て、思ったこと・考えたことを自由につづって参ります。このブログを読んでくださる方々と、「安心」を共有することを望んでいます。

禅語「閑古錐(かんこすい)」。

「閑古錐」という禅語があります。

 

『ほっこり、やさしい禅語入門』(P92)では、

 閑古錐(かんこすい)とは、古びて先がまるくなり、使えなくなった錐(きり)のことです。切れ味の悪くなった錐は、道具としては役に立ちません。でも、長い年月を費やし、来る日も来る日も穴を開け続けてまるくなった錐には、ただ鋭いだけの錐にはない、円熟した魅力があります。禅では、真の修行者のことを閑古錐といいます。

 と書いてありました。

 

「錐」の仕事は、穴を開けることですよね。

 

自分の「穴を開ける」という仕事を、

来る日も来る日も、何度も何度も、熱心に行って、

いずれ、穴を開けることができなくなるほど「まるくなること」……

これが、「錐」の「目標」なのだと思います。

 

そして、「錐」にとって、長い時間をかけて、

「鋭く尖っていた自分」が「まるくなったこと」は、

それだけ「本分をまっとうした証」になるのだろうと思います。

 

このように、禅僧も、仏道によく通じて「円熟」し、

人として「円満」になることを「目標」にするようにと、

「閑古錐」は説いているのだと思います。

 

しかし本当は、禅僧にだけでなく、

自分の「尖った考えや言葉、しぐさ」などを

「まるくするように」と、

人にすすめているのだとも思います。

 

私自身のことを言えば、実社会・実生活の中で、

失言もしますし、人を傷つける言葉も発してしまいます。

つい、ムキになってしまうところもあります。

尖った性格をしているのだろうと思っています。

このような自分を「修正したい」と、

もう何度思ったかわかりません。

 

ですので、

「相手を傷つけることのない言葉やしぐさをするように」と、

「まるくなれ」と、

「閑古錐」の教えは、まさに、

私に向かって発せられている言葉だと思っています。

 

私は、この「閑古錐」のお話から、

また私自身のことではありますが、

もう一つ気づいたことがあります。

 

私はかつて、

仏教が(仏教に限ったことではないのかもしれませんが)、

「そのままのあなたでいい」

と言ってくることに、戸惑いを感じていました。

 

なぜなら、

「いい人はそのままでいいだろうけれど、

 悪い人がそのままでいいとは思えない」

と思ったからです。

 

私の場合で言うなら、

「尖った性格の私がそのままでいいとは思えない」

というわけです。

 

しかし、この「閑古錐」という禅語に出会って、

「そのままのあなたでいい」

ということで「いいんだ!」と思うようになりました。

 

私は、自分らしくあろうとするだけで、

自ずと「まるくなる」のではないか、と思えてきたのです。

 

自分らしくあっていいとは、

「ラク」な話に聞こえるところがあります。

 

しかし、私の場合では、少し違います。

私らしく「尖った性格」を続けてきた私は、

社会の中で、人とよく衝突してきました。

 

ですので、「ラク」ではありませんでした。

そして、何度も衝突しているうちに、

性格を「まるくしたい」と思うようになりました。

 

つまり、

「尖った性格の私がそのまま」をやっていたら、

「まるい性格の私になりたい」と思うようになったわけです。

 

きっと、「そのままのあなたでいい」というのは、

まちがっていないと思います。

 

しかし、私は、

「そのまま」をやっていたら、いずれ、

自ずと「変わりたくなる」から「そのまま」でいい、

ということではないか、と思いました。

 

もちろん(と胸を張って言うことではないですが)、

私はまだまだ、あちらこちらで衝突したり、

ひっかかったりしていますので、

まだまだ尖っているということだと思います。

 

しかし、尖っているからこそぶつかり、

ぶつかるからこそ、角が取れるのかもしれない、

と思ったりもします。

 

いずれにしても、気持ちや考え方の変化は、

まず、「私らしくあろう」と思うことから始まるのではないか、

と私は思っています。

 

また、本当にそのままで、

変わらなくてもいいところもあると思っています。

 

自分の意見をますますもちながら、

自分の意見と違う人とぶつからないように、

たとえぶつかっても、傷つけ合わないように、

「まるくなること」が、

「閑古錐」を通じてもった、私の目標です。

 

そして、自然体で本当に「ラク」になれたら、

「まるくなった」ということかもしれない、と思っています。

 

 

本日も、お読みいただきまして、どうもありがとうございました。

 

引用文献

『ほっこり、やさしい禅語入門』石飛博光 成美堂出版

ほっこり、やさしい禅語入門―心豊かな毎日をおくるための禅のことば