世の中の観察日記

世の中を見て、思ったこと・考えたことを自由につづって参ります。このブログを読んでくださる方々と、「安心」を共有することを望んでいます。

「回向(えこう)」について。

まず、ごあいさつからさせていただきたいと存じます。

 

当ブログは約4か月に一度、更新をさせていただいております。

11月を迎えて書かせていただく今回の記事は、

今年最後の記事になります。

 

更新の回数が大変少ないにもかかわらず、

お越しくださった皆様には大変感謝いたしております。

今年はまだ1か月半以上ありますので、

かなり早いごあいさつになってしまいますが、

今年も当ブログにお付き合いくださいました皆様、

大変お世話になりました。どうもありがとうございました。

 

 

それでは、本題の「回向」についてのお話に入らせていただきます。

 

まず、『お経の意味がわかる本』という本の73ページにある、

「回向」の説明を引用させていただきたいと思います。

 

「回向は、「廻向」とも書きます。その意味は、「ふり向ける」ということです。つまり、自分が積んできたり、修めてきた善根功徳を、人々や生き物のためにふり向けるということです。また、自分の功徳を他人に施し、極楽往生の資(たすけ)としようと願うことでもあるのです。さらには、仏事・法事を営んで、その功徳が故人の死後の安穏をもたらすように期待することでもあります。」

 

同じく73ページに「回向」には三種あることが書かれています。

「その一つは、自分の積んだ善根功徳を自分の悟りにふり向けるという菩提(ぼだい)回向です。二つめは、他のものの利益にふり向けるという衆生(しゅじょう)回向。三つめは、回向そのものにとらわれないで、そこに平等真実の理(ことわり)を悟るという実際(じっさい)回向があります」

 

実は今年、私の母の姉(伯母)が老衰で亡くなりました。

91歳でした。大変苦労をしてきたのですが、

それを感じさせないほど、いつも明るく優しい伯母でした。

 

そして、私は思い出したことがあります。

 

私の母と伯母がまだ子どものころ、私の母の父(祖父)が、

「村外れに道祖神を建て、月に何度かそこにお金を置きに行っていた」

というお話なのですが、

「なぜ、お金を置いてくるのか」と伯母が尋ねると、

「困っている人が持っていくだろうから」と祖父は答えたそうです。

 

私は感動し、このような祖父を誇りに思っておりますが、

それ以上に、私が今日まで生きてくることができたのは、

見返りを求めることのない行いで積んだ祖父の功徳が、

私にふり向けられていたおかげなのではないかと思え、

「なんてありがたいことだろう」と深い感謝の念を抱きました。

 

また、私がそのおかげに気づくことができたのは、

その祖父の行いを伯母と母が私に伝えてくれたからであって、

ここに“つながり”というものと、伯母と母の功徳をも感じました。

 

祖父も伯母も母も、功徳を意識して私に伝えてきたのではない

と思います。

もし、そのような気持ち(功徳を積む狙い)があったならば、

私に、このお話を聞いての感動はなかっただろうと思います。

 

おそらく「功徳」は、

ただただ、人々や世の中の安穏を純粋に願う思いのある人が、

知らない間に積んでいるものであって、

その「功徳」が、その人の純粋な願いや思いがあることによって、

自然に自他にふり向けられる、

それが「回向」というものなのではないかと私は思います。

 

私は、意図的に功徳を積もうと思ってすることのすべてを

否定するつもりはありませんが、

見返りを求めることなく、

ただただ、人々や世の中の安穏を純粋に願って、

自然になされる行為の多くが功徳につながっているのだろう、

と思います。

 

今年は、新型コロナウィルスの猛威によって、

世界中が困難や恐怖に襲われる年になってしまいました。

もちろんながら現在も、とうてい油断のできない状況にあり、

寒い季節の到来とともに、感染者数がかなり増加し、

ますますの緊張の高まりを多くの方々が感じていらっしゃる

ことと存じます。

 

ウィルスの恐怖ばかりでなく、経済的な問題や将来への不安など、

苦しい状況を抱えている方も多くいらっしゃることと存じます。

それでも、

「苦しいけど生き抜こう」と自分自身を励ます方がいるならば、

私にとってそれは、世の中の安穏の一つです。

 

一人でも多くの方が、

「自分のために、明日につながる何かをしよう」

「誰かのために、未来につながる何かをしよう」

とするならば、

一人ひとりの思いに“つながり”が生じて、

一人ひとりの「回向」の力の誕生があるに違いない、

と私は思います。

 

最後に、再び先ほどと同じ『お経の意味がわかる本』という本の

72ページから引用させていただき、私の好きなお経の一つ、

『普回向(ふえこう)』をご紹介させていただきたいと思います。

 

『普回向』

「願わくは此の功徳を以って普く一切に及ぼし、我等と衆生と皆共に仏道を成ぜんことを。」

(ねがわくはこのくどくをもってあまねくいっさいにおよぼし、われらとしゅじょうとみなともにぶつどうをじょうぜんことを)

意訳:

「この(善行によって生じた)功徳を、あまねく生きとし生けるものにふり向け、私たち仏道修行者と生きとし生けるもの、皆が仏道を成就することができますように」

 

私は、皆様の明るく楽しい毎日を願い、

『普回向』を唱えさせていただきたいと存じております。

 

 

お読みいただきまして、どうもありがとうございました。

 

引用文献

『お経の意味がわかる本』服部祖承 大法輪閣

 お経の意味がわかる本 (仏教を学ぶ)

 

※次回の記事更新は「2021年3月」を予定しております。

 皆様のご都合がよろしい時にお読みいただけましたら、

 幸いに存じます。