禅語「七走一坐(しちそういちざ)」。
あと数日で12月ですね。
約1ヵ月後に新たな年になるとは……
私にとって今年は「忙しかった」
というイメージの強い1年となりました。
今回の記事は「七走一坐」という禅語にしました。
以前読んだ本を何となく手に取って思い出した禅語です。
まさに、今の私に向けた言葉で、
自分に必要な時に、自分に必要な言葉が届くものだと、
このタイミングのよさにつくづく感心しておりました。
その本は『図太くなれる禅思考』というタイトルの本です。
その本の中で(P66)、「七走一坐」とは、
「七回走ったら、一回は止まってじっとすわり、自分自身を見つめなさい」という意味だと書いてあります。
また、「止まって見つめ直してみなければ、自分がどんな走り方をしていたのか、どこに向かって走っているのかは、よく見えません」と書いてあり、
さらに、「一度止まると書いて「正」という字になります」と書いてありました。
「七回走ったら、一回は止まって……」というと、
たとえば、最低でも1週間のうちに1日は、
“休息”と共に、“自分を振り返る”のがいいのだろう、
と思えてまいります。
もちろん、自分にとってちょうどいいペースで振り返るのが
いいと思います。
“自分を振り返る”ことは、
「自分がどんな走り方をしていたのか」の点検であり、
今のスピードでいいのか、力配分はそれでいいのか、
自分の持っている力量をわかっているのか、
焦って周りが見えなくなっていないか、
もしかしたら走り出す前の下準備に問題があったのか……
といったことに気づくためにも必要だと思います。
また、“自分を振り返る”ことは、
「どこに向かって走っているのか」の確認であり、
目標あるいは目的地というものがあったはずなのに、
道中で何かに引っ掛かって目標・目的地を忘れてしまったり、
いつのまにかルートを外れて違う方向へ走っていたり……
目標・目的地に向かうこと以外のことで、
力尽きてしまわないためにも必要なことだと思います。
そして、なかなか難しいことだと思うのは、
走っているうちに目標・目的地の間違いに気づき、
“ここまで来てしまったから後には戻れない”
という地点まで来ていた時に“戻る”ことです。
しかし、それでも、
一度止まって“戻る”という選択をするとしたら、
「正しい」選択になると思います。
時々、スポーツ観戦をしている中で、
序盤は調子の悪かった選手が、
試合中に調子を上げてくるという場面を見ることがあります。
徐々にペースをつかんできたということも考えられますが、
修正箇所に気づいたということもあると思います。
試合中に修正ができる選手というのは、
おそらく、状況を冷静に把握したいだけに、
試合中に“一瞬無になる”(一度止まる)ことができ、
それで修正を可能にしているのだと私は思います。
また、コーチやチームメイトから修正箇所をアドバイスされる
ということもあると思いますが、それを素直に聴くことが、
“一度止まる”ことにつながっているのだと思います。
すでにスタートしていることをやめたり、
一度立てた目標を変えたりすることには難しさを感じます。
しかし、「とりあえず一度止まる」ことならできそうですし、
とりあえずであろうとも一度止まれば、
その地点が新たなスタート地点と言える気がいたします。
そう思うと、今までしていたことを“やめる”“変える”とか、
もとのスタート地点に“戻る”という感じではないですよね!
今までしていたことは、新たなスタート地点に立つために、
きっと必要なことだったのだから!
これまで“自分を振り返る”ことを中心に述べてきましたが、
ここには“休息”という基盤が必要だと思っています。
「七走一坐」の「一坐」は「一回坐る(すわる)こと」ですが、
「頭も心も体も一度休ませて冷静になること」
を伝えているのだと私は思います。
目標・目的地などは特になくて、
周囲に合わせてただただ走っていた、
走らないわけにはいかなかったから走っていた、
そのような方もいらっしゃるかもしれません。
ぜひ一度立ち止まって、すわって、
「私は疲れていないだろうか」
と自分に問いかけてみてほしいです。
意図的に休息する(坐る)ことで、
“初めて自分の疲労に気づく”という場合があると思います。
一度立ち止まった場所から見える景色を
“ただただ純粋に”眺めてみれば、
そのあとに踏み出す第一歩は、
自然と「正しい」方向を向いているように思います。
中には「自分の疲労に気づくわけにはいかない」
という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、一度止まって、
頭と心と体を休ませたうえで選んだ方向が、
きっと「正しい」と思います。
一言で言えば、「七走一坐」は、
「正しい方向へ向かうために、休息を忘れないように!」
という意味であると私は思っています。
今回の記事が、私の今年最後の記事でした。
今年も当ブログにお付き合いくださいました皆様、
どうもありがとうございました。
年に3回という少ない更新回数ではありますが、
来年も細くて長いお付き合いをしていただければ、
幸いに存じます。
また、私が皆様に望んでいる一番のことは、
“休息”を忘れず、ご健康に留意していただくことです。
どうぞよいお年をお迎えくださいませ。
お読みいただきまして、どうもありがとうございました。
引用文献
『図太くなれる禅思考』枡野俊明 文響社
※次回の記事更新は「2025年3月」を予定しております。
皆様のご都合がよろしい時にお読みいただけましたら、
幸いに存じます。